僕のなんでも手帳

おバカな僕の思うことをただただ書いていきたいと思います

短編小説:ラブメーター

ある日、旦那が大きな荷物を抱えて帰ってきた 

白い箱で1メーターくらいの高さだろうか 幅は45センチくらい 

「どうしたの?そんな荷物」


まるで子供が欲しかったおもちゃを買ってもらった時のように目を輝かせ

旦那は、ゆっくりと白い箱を床に置く


「気になるだろ?!面白い物を手に入れたんだ!君はあまり喜ばないかもしれないけど、、」 


話をしている途中で我に返ったのか、旦那は私の顔色を伺うように見ていた 


「へぇー、それで?いくらしたの?私が喜ばない物と知って買ったんだからせめて生活の役には立つんでしょうね?」


それを聞いて旦那は自信有り気な顔をしながら答えた 

「勿論だ!僕らの結婚生活がとても楽しくなる代物さ!値段は15万!」


私は妻に元気一杯に答えた 私たちが結婚したのは半年程前


妻との出逢いは私が働く会社、当時、妻は新入社員で私が教育担当だった


社員の男達が目をキラキラさせ、まるで飢えた狼のように彼女を見ていた


綺麗で飾らず明るく元気な彼女に今まで檻の中にいた私の中の狼も目覚めてしまっていた


新人教育中に彼女と接していく中で私は完全に彼女に惚れてしまい 


教育担当だったにも関わらず、研修そっちのけで猛アタックした 


私はバカ真面目だ、社員が皆、この私の行動に驚きながらも何故か応援してくれた 


「珍しいもんだな、真面目なお前があそこまで仕事を忘れてしまうんだ、今回の件だけは見逃してやる、頑張れよ」

満面の笑みであの厳しい部長でさえも応援してくれるほどに、私はバカ真面目だったのだ



「で、一体、その箱の中身は何なのよ?私たちの結婚生活が楽しくなるなんて言って、最近流行りのゲーム機とかじゃないでしょうね?」 「あぁ!ゲーム機なんかじゃない!これはね!」

そう言いながら旦那は箱を開け中身を重そうに取り出した
白い箱からこれまた白いまるでSF映画に出てくるあのロボットのような。。

「これはね!ラブメーターロボって言ってね!」

「はっ?ラブメーター?何そのダサいネーミング!ラブメーターって、あなたね!それがどう生活に役立つのよ!!」

子供のように楽しげに解説しようとしている旦那を黙らせるかのように言い放った 


この無駄としか思えない旦那の買い物に怒りが爆発しそうだった


妻は赤面しながら今にも噴火寸前の活火山のようだった 


私は慌てることなく、この素晴らしいロボの説明をして妻の怒りを抑えようとした

「このラブメーターロボは僕達夫婦の愛を測る機能があるんだよ、更にね、部屋の掃除や、、」 



旦那は淡々とこの訳の分からないロボットについて説明し始めた

とりあえず私たちの愛を測るのと掃除をしてくれるのはわかった 

あまりにも冷静になって説明するもんだから、怒るのもバカバカしく感じてしまった 


「もぅわかったから、とりあえず愛を測るってことと、掃除してくれるわけね」


どうやら私の作戦勝ちだ 妻の怒りは鎮まり、なんとなくではあるがこのラブメーターの機能を理解はしてくれたようだ 


「早速、このロボを起動して僕らの愛がどれくらいか確かめてみよう!!」 


「ほんとに愛を測るなんてできるの?」 


旦那は子供のようになってロボットのスイッチを入れ、今か今かとロボットが動き出すのを待っている
私は半信半疑で、ロボを見つめていた


私と旦那の出逢いは旦那が勤める会社に私が新入社員として入社してからだった

新人の教育担当だった旦那は真面目で周りの社員からも慕われていた 

今じゃ珍しくも思えるタイプの人だ 


顔はイケメン?とまではいかなくとも整っていて、女性社員にもそれなりに人気があった

私もたまに出てくる子供のような素顔にギャップを感じてなんか母性本能を擽られた 


いつも優しく接してくれるが周りの目も気にせず仕事そっちのけで猛アタックしてくる


ただただ真っ直ぐに私を口説こう必死になってる旦那に押し負けて、付き合い始めてから3年


プロポーズされたのが半年前でそれから結婚、そして今に至る

私は田舎で育った

私の父は私が生まれてすぐに病で他界し母一人で私を育ててきた

母には何かと迷惑をかけたりしたけど、ここまで育て上げてくれたことに本当に感謝している 

きっと父も生きていたら、昔やんちゃしていた私がこんな優しく真面目な旦那と結婚したのを快く許しただろう

ピーーーー

私はラブメーターロボ

目の前には、子供のようにはしゃぐ男

少し離れたところに私を半信半疑で見ている女

どうやらこの男が私を目覚めさせたようだ

私には人間の心理行動や様々な人間の行動パターンなどあらゆる膨大なデータが組み込まれていて
人間の言葉や表情、行動などを解析し数値化することができる
愛と言うより正確には2人の親密さを測るのだ
現代の技術の進歩は素晴らしい
AIがロボットに組み込まれてから長らく経つが、最早、ロボットにも意思が芽生えたと言っても過言ではないだろう


「おー!!目が光ったぞぉぉぉ!」

ピーーーと言う少し古臭い音と共に ロボの目が赤く光った

「初めまして!私はラブメーターロボです」

「とても流暢に喋るのね」

「凄いなあ、早速だけど、僕らの愛を測ってくれないか!?ラブメーターロボ!」

「あなた達のラブ度は。。。まだ計測できません。計測するまでには最低1ヶ月の期間が必要となります。」

「えー!なんだよ、時間がかかるのか、残念だなぁ。でも、1ヶ月すれば僕らの愛がどれくらいかわかるね!」

「本当に測ってくれるのかしらね?」

「まぁまぁ1ヶ月なんて、あっと言う間に過ぎるさ」

私の胸は躍っていた
妻にこのロボの素晴らしさを伝えるのは少しだけ先になりそうだ
一ヶ月の間、とりあえずお掃除ロボとして活躍してもらおう


一ヶ月、長いのか短いのか分からないけど

とりあえず旦那が買ってきたこのロボはお掃除ロボとして動いてもらう他はない
1
5万ってデカい買い物だけど、旦那が嬉しそうにしているのを見ていたらなんか、どうでも良くなっていた

旦那はニコニコしながらロボを見つめている相変わらず子供のようだ

 

ようやく、待ちに待った日がやってきた
私がこのロボを持ってきてから1ヶ月

私は朝から妻より早く起きて ロボが掃除している姿を見ていた

「ロボよ!遂に、遂に1ヶ月経ったぞぉぉ!」

「そうですね、旦那様と奥様のラブ度も計測可能な状態になっていますよ」

「本当かい!?よし、では妻が起きたら早速、僕らの愛がどれくらいか教えてくれ!」


「わかりました。ちなみに、1ヶ月経過後から日毎にラブ度を計測し
 報告することが可能となります。この機能をオフにしたい場合はいつでもお声かけください」


「おぉ!なんと!素晴らしい!大丈夫!毎朝オンの状態で報告してくれ」

「わかりました。あ、そうだ、ちなみにラブ度が上がった場合や下がった場合も直ぐに報告致します」

「なんか、ロボットにしては言い忘れが激しいね (笑)
まるでお手伝いさんみたいだ、技術が進歩したとはいえ、ここまで人間味が増しているとは!」

「そうですね、今のお言葉は褒め言葉として受け取っておきますアハハ」

「ははははっ、ジョークもわかるのかい?笑い方は人間味ないけど」

「おはよっ朝から子供みたいに騒がしいわけよ、あなた」

「お!起こしちゃったかい?ごめんね、だって今日は僕らの愛がどれくらいかがやっとわかるんだもの」

「旦那様と奥様のラブ度は70%です」

「え!?70%?」

「なんかリアルな数字ね(笑)」

旦那は何故か悲しそうにして項垂れていた

「100%じゃないのか。。」

「私の計測は正確です、心理行動や人の表情、言葉から感情を読み解き数値かしています。」

「ほら、どうしたのよ、目指すは100%でしょ?」

妻は項垂れている私の背中をバチっと叩いた

100%ではなかったのは少し残念だったが まだ結婚してまもないし、ましてや人の感情までも理解するロボだ
もし、感情で「ラブ度」が上下するなら致し方ない

「よーし!いつかは100%を出してやるぞぉ!見てろー!ロボよ!」

「その日を楽しみにしております」

100%になる日はいつになるだろう
私がこのロボを持ってきてから数年が経つ

些細な事がきっかけとなり喧嘩をしてしまった

タイミング悪く、その時、ロボがラブ度を報告した

「旦那様と奥様のラブ度は35%です」

「ロボ、すまないがその機能はしばらくオフにしてくれ」

「わかりました」

それからラブ度の報告もなく、妻とは会話も少なくなっていた 妻に対する気持ちが薄れた訳では無い

妻の態度が喧嘩の後から冷たく感じて、どうしてもいつもの私では居られなくなっていたのだ

 

私は旦那と喧嘩をしてからあまり口を利かなくなった

言い訳にしかならないが 喧嘩は付き合っていた頃も何度かあった

家事や仕事でのストレスもあったし、結婚してから初めての大喧嘩、イライラが爆発して頭に血が登って我を忘れていた

BARに駆け込んでひたすらお酒を飲んでひどく酔っ払った

その日、私は旦那を裏切った
それから後悔を隠すように私は旦那に対して冷たい態度をとるようになっていった

いつの間にか、後悔していたことも忘れ 旦那との距離も離れていった
言い訳にしかならないけど


私は妻が他の男と浮気しているのを知っていた
たまたま、仕事の帰りに男とホテルに入る姿を見てしまったのだ

知らなければよかった
その日私は妻を裏切った

後悔しかない
言い訳にしかならないが
あまり強くない酒を飲み酔った勢いでBARで出逢った女性と一夜を共にした
心の傷はそんなものでは埋まるはずもない

私は、妻を愛している

それは例え、他の男といたのを目撃していても変わらない

変わらないからこそ傷が深いのだ
ただただ、赤の他人とまるでルームシェアしているような日々が続いた

 

私はこの2人の男女の親密度を毎日計測していた
機能をオフにしたのはあくまでも報告することだけだ
見るに耐えない状況と言うのか
男は項垂れ、女はまるで無心のように表情を一切崩さない

私よりロボットのようだ
現在の彼等の親密度は3%、男はいつも女の姿を項垂れていながらも優しく見守っている
それが唯一の救いと言うべきか
私にはこの2人を見守ること以外にできることはない
ラブ度を100%にする目標もいつの間にか忘れさられているようだ
100%と報告するのが私の目標だったのだが

 

朝の陽射しが眩しく私の目を擽って私は目覚めた
相変わらずの旦那と私

旦那は朝、早くから出掛けているようだ
私も予定を入れておくべきだったか

「おはようございます、奥様」

いつもロボは私が寝室から出てくると声をかける
喧嘩する前まではこのロボに対しても冷たくなかったのに

今じゃ旦那同様に冷たい態度で接している

「旦那様は朝早くからお出かけになりましたよ」

普段、このロボといる時間が長いのは旦那だけど、私は今日1日このロボの話し相手しないといけないなんて絶対嫌だ

一方的に話しかけられてもウザったいだけだ、私は心の中でそう叫んでいた

そして、自分の心が酷く荒んでしまっていることに気付いた
動揺してロボを見る、ロボが棚の上を器用に腕を伸ばして掃除していた
棚の上に飾ってある写真

それは母がくれた生前の父と一緒に写る母の写真だった
その姿が私の目に映りこんだ、気付けば涙が零れていた

女は泣いていた 棚の上の写真、これを見て泣いている

私はいつもこの棚の上を掃除をする度に 懐かしさを感じていた
時間という概念はロボットである私には関係ないが、長年同じ事を繰り返ししていると

ロボットも人間でいう歳というものを感じるのだろうか

ちなみに、現在の彼等の親密度は6%

男は相変わらず後悔の念で一杯の様だが
女は今、この瞬間、後悔し始めたようだ
罪悪感とは相手に対して好意があるからこそ芽生えるものだ

一つ二人の仲を回復する良い方法が浮かんだ


私は朝から出掛けていた
妻の住んでいた田舎へ行っていたのだ
何故かわからない
いつの間にか、車で妻の実家の前まで来ていた

庭の方で妻の母が畑に水をやっていた
高齢ながらも元気そうだ どうせなら、少し話をして帰ろう


いつになったら旦那は帰って来るのだろう
私はもう全てを正直に話そうと思う
なんであんなことで、と後悔しても遅いのは承知だ

だからこそ、心のモヤモヤを隠すように過ちを繰り返してきた私への罰だ

許してもらえるとは思っていない ただ、もう偽るのは嫌なだけ

苦しいのから逃げていたくないだけ

あんな些細な喧嘩がここまでになってしまった原因は私の責任だ


女はどうやらなにか、覚悟を決めたようだ
人間とは本当に不思議な生き物だ
時に脆く、時には強く直向きになる
ロボットの私にはないもの

自分で過ちに気付きそれを正そうとする力だ
そして何より温もり
人の言葉や感情には温もりがあるのだ
データにはそう記されている


「本当にありがとうございました!次は妻を連れて遊びに来ますので!」

「何言ってんの?いい加減に孫も連れて来なさいよ、明日には棺桶かもしれないってのに」

「縁起でもないことを、そうですね、次はきっと子供も連れて遊びに来ます!」

「はいよ、気を付けて帰ってね」

「ありがとうございました!」

お母様と、色々話をした
妻との今の仲はもちろん話していない
妻の父親のことについて色々と聞かせてもらった

妻が生まれてから直ぐに父親は病で倒れ亡くなったと言うのは聞いていたけど
お父様はとても元気で明るく何よりバカ真面目な人だったそうだ

何故か私は嬉しかった
妻に謝ろう、正直に話をして、そして正直に自分の気持ちを伝えよう
早く謝れば良かった 今更、こんなことを後悔しても遅いが
例え、もう私に対して気持ちが無かったとしても良い
また一からやり直せるチャンスがあれば

私は昔のように妻に猛アタックする


女はじっと座っていた
テレビを付けているのにテレビを見ずに
ただ、じっとこれからの出来事を前に構えるように

私は掃除を終え、充電モードに入っていた
テレビ画面をじっと見ていると私と同じロボットが紹介されていた

「ラブメーターロボは数年前に発売されたにも関わらず今だ人気のある商品です!その人気の秘密に迫りました」

どうやら私は人気のあるロボットようだ

「開発者の方に人気の秘密を聞いてみましょう!
 すみません、ラブメーターロボはなんでここまで人気なんですか?何か秘密があるのでしょうか?」

「そうですね、特に秘密にしているわけではありませんがこのロボットは月に一度アップデートされます。
 アップデートは細かなバグの修正と、ロボットが話す言葉を増やしていることでしょうか」

「なるほど!今、どれくらいの言葉喋るのでしょうか?」

「人とのコミュニケーションで使用される言葉のほとんどは当時から話すことができましたが
 最近追加した機能で、ジョークを理解して返事をする事が可能となりました」

なるほど、私はどうやら常に修正と機能が追加されているらしい
では暫く私は更に進化していくのだな


「ただいま」

旦那が帰ってきた
少しいつも見ている顔より明るい表情に見える

「お帰りなさい」

妻が、返事をしてくれた
いつも見ている妻の表情とは違う 申し訳なさそうにしている
そんな表情だ

やっと男が帰ってきた
私はこの二人の仲を回復するための
作戦を実行しようと思う

「やっと帰ってきたか、待ってたよ。二人とも私の話を聞いてくれ」

「え?」

「どうしたの?」

「今まで私はお前達二人をずっとロボットとして見守ってきた
 それがある日を境にお前達はお互いに距離を置くようになった。私はねもう、見ていられないよ」

「えっと、、」

「あの、、」

二人は目が点になっている
あまりにも急な出来事で 今の状況を理解出来ていないようだ
しかし、また作戦は終わっていない
確り最後まで実行しなければ

「ロボ、どうしたんだ?壊れたのかな?」

「まさか、私、ずっと家に居たけどその時は何にもなかったわよ」

「そうか、でもなんで急に」

「あなた、それよりちょっと話したいことがあるの」

「あ、僕も話そうと思ってたことがあるんだ!あのね!」

「あなた方のラブ度は100%です」

 

遂に私の目標は達成できた
この後の彼等のことは言うまでもないだろう

技術の進歩とは実に素晴らしいものだ
AIがロボットに組み込まれ意思を持つこともそう遠くはないはずだ

ただ、私の場合は例外だ
実は作戦を実行中に気付いたことがある
アップデート後に追加された言葉や機能以上の行動ができること
言葉や読み取れる人の感情が遥かに増えていること

そして何より

本来存在しないはずのデータが私には「記憶」されていたことに

 

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最後まで読んでいただいた、あなた

ありがとうございます。

 

これは、自分がシャワーを浴びていて急にあたまに浮かんだ物語です

 

これは面白そうだからどうしても形に残しておこうと思い

文章力や表現力も乏しいですが

こうやって短編小説を書かせてもらいました

 

普段からこのようなことを仕事にしてるとかではないです

 

面白そうだから挑戦したのです。

 

良かったら他の記事も読んで見てください

全然、関係ないこと書いてますが

 

それでは!